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【 Nelly Furtado / Mi Plan (2009) 】
 
ポルトガル系カナダ人であるNelly Furtadoが、全スペイン語のフルアルバムを制作・リリースするというのは一体どういうことなのか。ヒスパニック・マーケットの拡大を説明するまでもないし、実際視野に入れているだろうが、ひとえに彼女のあまりに強い音楽的探究心・好奇心に因るものだろう。もはや当たり前のようにチャートに溢れるメインストリームポップとHip Hopのクロスオーヴァー・ムーヴメントを先頭に立って牽引し実際に成功を収めたのも彼女だし、今作以前も外国語曲の制作や、Juanesを始めとする非英語圏(おもにスペイン語圏)のアーティストとの共演にも積極的だった。

ツアー後に新しい英語盤の楽曲制作に入ったはいいが、行き詰まってしまい、気分転換にスペイン語で曲を書き始めたら途端に次々とインスピレーションが湧いてきた、というのがそもそものきっかけらしい。幸い、これまでの功績もあって、彼女は既にスペイン語盤制作にも最高の環境と人材に恵まれていた。今作で主にペンを執っているのは本人をはじめ、同郷カナダの売れっ子James Bryan、現行でラテンポップのヒットを量産しているLester Mendez、キューバ系カナダ人アーティストのAlex Cuba、有名どころではSalaam Remiも参加。以上のメンツからもわかるように、スペイン語盤でありながら、ターゲットをラテン圏に限定していないユニヴァーサルな作品となった。もちろん、Nelly独自のジャンルレスな味付けが加わって、誰にも真似できないオリジナルなものに仕上がったわけだが。

残念ながら、現時点で日本盤の発売は未定ということなので、ここでは制作者・ゲスト情報を含めた全曲解説でもやってみようと思っている。期待以上の傑作を届けてもらったので、せめてものお返しという意味でも。(以下、超長文注意)
1 "Manos al Aire" ("Hands in the Air")
今作からの1stシングル。6月に発売され、ビルボードのラテンチャートで1位を獲得した。北米出身のアーティストによるスペイン語曲が首位に立ったのはこれが初めてのことである。メイン体制であるネリーとJames Bryan, Alex Cubaの3人による、まさしく今作の核となる楽曲。 ギターカッティングとハネるビートがパーカッシヴな導入から、ネリー持ち前の溌剌とした歌唱が映える爽快なフックに滑り込む構成は素晴らしく、リードにふさわしい快作である。タイトルはまんま「お手上げ、降参」の意味。束縛する恋人との関係にしびれを切らせたネリー「もうあなたと戦う術はないわ/お手上げよ/昔みたいに、あなたを愛することだけがすべて」。

2. "Mas" ("More")
正式な2ndシングルに決定(9/29リリース)したこの曲は、はにかむように歌うネリーと牧歌的な味わいのシンセトラックが、フレッシュなデビュー時を彷彿させる。まさにフレッシュ・トゥー・デスなネリー様だからこそできる芸当である!プロデュースを担当したLester Mendez は、Shakiraの"Underneath Your Cloths"、スペイン語曲"La Tortura"、Jessica Simpsonの"A Publuc Affair"などのヒット実績を持ち、ほかエンリケやサンタナなどの作品にも貢献してきたスーパー・ラテンポップ職人である。Shakiraの名盤Donde Estan los Landrones?にも5曲提供した、と言えばその腕のほどがわかるだろう。

3. "Mi Plan" ("My Plan") con Alex Cuba
シャープなフラメンコ・ギターの奏でが最高にクールなタイトル曲。プロモーションシングル第2弾として8/11にiTunesでリリースされた(公式シングルとは異なる)。今作で全面的にサウンド制作に関わっているAlex Cubaが客演としても手を貸している。ネリー同様カナダ出身だが、そのマルチカルチュアルな出自から、ラテンポップ、ジャズ、ファンクと多彩なサウンドメイキングを特徴としている彼は今作における最高の協力者と言えよう。「もう痛みは消え去った/あなたは暗闇を照らす太陽/あなたと一緒なら飛んで行きたい/幸せを求めて/それが私の計画」

4. "Sueños" ("Dreams") con Alejandro Fernandez
ここで大物ゲスト登場。Alejandro Fernandez先生!マリアッチ・ランチェラ歌手としてまず名を成し、ポップ畑でも大成功を収めて"El Potrillo (小さな馬、という意味。何故?)"の異名をとるスーパースターである。やさしく爪弾かれるギターの音色に乗せた二人のデュエットは甘美きわまりなく、たちまちにして夢想の世界へいざなわれる。ロマンティックなムードを作り出すことにかけては一流と言われるアレハンドロとの共演だからこそ生み出せた佳曲だ。「現実は夢の一部/大きな夢でも小さな夢でも/すべては夢から始まったのさ」

5. "Bajo Otra Luz" ("Under Another Light") 
con Julieta Venegas y La Mala Rodriguez
最後のプロモーションシングルであり、注目のラテンスター2人を客演に招いたこの楽曲は間違いなく今作のハイライトである(断言)。フリエッタ&ラマラについては、もはや説明するまでもないのでここでは割愛(参照記事)。これまでの流れを断ち切るような底抜けに明るいラテンパーティチューンで、予想以上にフリエッタの作風が色濃く出ており、フラメンコスタイルを踏襲したラマラの気怠ラップの効果も相まって"Eres Para Mi"を彷彿させまくる。やはり、フリエッタの辞書にハズレの文字はなかった。ちなみにプロデュースを手がけるはThe Demolition Crew - ネリーの現在の夫であるDemacio Castellon(キューバ系のエンジニアで、Timbalandの手がけた作品群に広く関わっている)が率いるプロダクションチーム。"El color de mi vida cambio desde que tu llegaste"「あなたがここに来てから/私の人生は色を変えたの」

6. "Vacacion" ("Vacation")
引き続きJulieta Venegasがライティングに参加、という嬉しいサプライズが。さらに驚いたのは、今までのフリエッタ作品では聴いたことのないタイプの楽曲ーなんとクンビアの要素を取り入れている!もちろん、クンビアには欠かせないこのアコーディオンも?と思ったら、やっぱり弾いてるのもフリエッタ様!こういうのがネリーファータドのアルバムで聴けるとは思わなんだ。クンビアのビートは普通に聴くとちょっとダサめだったりしてしまうのだが、プロデュースはLester Mendezということで、ややメインストリーム対応してるかなというところ。個人的には気にならないが。"La vida debe ser feliz"("The life should be happy").

7. "Suficiente Tiempo" ("Enough Time")
Salaam Remiについて説明はいらないだろう。レゲエ・オリエンテッドな音作りを得意とするプロデューサーで、元々NasやBlack SheepなどHip Hopプロダクションで知られ、最近ではAmy WinehouseやJazmine Sullivanといったポップ・クロスオーヴァー組との仕事でさらに注目されている・・ということでクロスオーヴァーの先駆けであるネリーと組むことは必然だったかも。これまたパーカッシヴなトラック上で、「朝早く起きて、子供を学校に連れてって・・あーもう時間がもっとほしい!」と突然フツウの日常をリリックに描き出している。今作のインタヴュー(トークショー?)でもネリーは「keep it real! REAL!!常にリアルな私でいたいから、歌詞にも日常を取り込んだのよ!」みたいなことを言っていた。

8. "Fuerte" ("Strong") con Concha Buika
前曲に引き続きSalaam Remiプロデュースで、シンセのフレーズが"We Takin Over"っぽいと思ったのだが、特にクレジットは無し。そういった近未来的なシンセ音とエキゾチックなフラメンコギターが醸す神々しさが同居する面白さがある。Concha Buikaという人はスペインの女性アーティストで、元々は赤道ギニアの生まれ。今作に登場した多くのアーティスト同様、彼女のスタイルも非常に多彩であり、フラメンコを始め、ジャズ、ルンバ、コプラなどを自在にミックスし独自の音楽を作っている期待の才媛である。 Conchaの”男気溢れる”と形容したくなるほど逞しい歌声、ネリーとの格調高き共演は必聴だ。

9. "Silencio" ("Silence") con Josh Groban
今作で最も印象的だった共演は?と訊かれたネリーは「Josh Grobanよ!he's the sweetest, sweetest young man! so sweet and humble!」と興奮しながら即答していた。考えてみると、Josh Grobanとは、このメンツのなかにあって異色と言えば異色の人選だ。もちろん、彼はラテン系ではない(父親がポーランド系ロシア人で母親がノルウェー人)が、ちゃんとスペイン語で歌わされて(笑)いる。楽天的でダンサブルだけではないラテン音楽の持つ、もう一つの側面である神秘性みたいなものを体現したかのような、幻想的かつ美しい楽曲。プロデュースはLester Mendezで、制作に参加したJulio ReyesはLooseにも参加していた("Lo Bueno Tiene Final")が、ほかThaliaやJennifer Lopez, Marc Anthonyらラテンセレブたちのアルバム制作を手広く手がけている、ラテン界の超ベテランプロデューサーである。

10. "Como Lluvia" ("Like Rain") con Juan Louis Guerra
タイトルに反して、まるで春の柔らかな日差しのような、また秋の木漏れ日のような爽快感・清涼感に溢れた名曲。今作最後のゲストはドミニカから招いたSSW/プロデューサーJuan Luis Guerra。Juanesとの共演で知られ、2007年にはLatin Grammyで5冠を達成した大物である。ドミニカ発と言うことで、バチャータ(説明するまでもないが、ドミニカ大衆歌謡)も時々やるようだが、この曲では残念ながらバチャータの要素は皆無。シンプルだが、隠喩を使ったエロティックな歌詞が特徴的だ。語りかけるように優しい"Tu y yo.."の歌い出しからガッチリと心を鷲掴みにされる。本作の隠れハイライトかも。

11. "Feliz Cumpleaños" ("Happy Birthday")
ピースフルな本編のラストを飾るもやはりNelly+Alex Cuba & James Bryanの3人。前曲の延長線上な作風でしっとりとし秋らしいナンバーに仕上がっている。Happy Birthdayというお目出度いタイトルと裏腹に、恋しき人を過ぎ去った時間に思う気持ちを詞に託した哀愁のうた。ラテンポップの神髄だ。プロデュースはNellyとDemacio Castellonの夫婦が担当し、仲睦まじくアルバムを終了させた。お疲れさまでした。

Hidden Track: "Fantasma" ("Ghost")
ラスト曲終了後、1分ほど置いて始まる隠れトラック。ブックレットにもクレジットの表記がなく、詳細はわからないが、"Maneater"風味のエレクトロチューン。もちろんスペイン語で歌われているが、前作のデッドストックか何かかと思うくらい2006年のTimbalandである。お化けっぽい、ホワホワしたシンセが耳に残る。まぁ、本編のカラーからは明らかにかけ離れてるし、こうやって距離を置いて収録したのは正解だろう。

(当方スペイン語は全然なので、歌詞解釈が違ってたらすまぬ。)

もう一度言うが、スペイン語で歌われているだけで、照準としてはUSの主流マーケットでも全然通用するプロダクションである。”ラテン”というある種の束縛、文化的差異にとらわれずに、あくまで自然な形でスペイン語作を仕上げてしまうことができるのは、少なくとも今のシーンではNelly Furtadoしかいないわけで、そういった意味でも今作は今年を代表する特別な作品だと思う。しかし、現実的に、いくらラテン・マーケットが拡大してるからとはいえ、スペイン語作をUSでヒットさせるのは、そこそこの大物でもまだまだ至難の業である(Nelly Furtadoの作品であっても)。広く受け入れられるかどうかはまた別の話だ。

個人的には非常に楽しめたし、アーティストとしての奥深さが色濃く出たという点で、これまでのNelly Furtadoの作品でもベストな出来だと思う。今後は矢継ぎ早に新作(英語)、ポルトガル語作も用意しているそうで、さらにインド音楽にも造詣がある彼女はヒンドゥ語での楽曲制作も初めているとか。ワールドポップにまで手を広げる雑食リスナーを満足させてくれる彼女のようなアーティストはまだ貴重だ。応援していくしかない。
| Today's Disc (Pops / Rock) | comments(2) | posted by tippee |
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comment
いやこのレビュー凄いですねえ。色々知らないことも盛りだくさんで。もう日本盤解説のライター名乗り出たらいいのに(笑) Lester Mendezってどっかで見たことある名前だと思ってたら「A Public Affair」やった人かあ。

個人的には前作の「No Hay Igual」みたいな強烈な曲も期待してたんだけど、思った以上にポップシンガーソングライター然とした作りになりましたね。「Manos Al Aire」は某所にも書きましたが(笑)、スペ語マーケットに限らず今年のベスト級ポップソングだと思います。しかし北米出身者のラテンチャート1位は初、ってことはジェニロペとかアギレラとかは獲ってないんだ。意外。他にも誰かいそうなもんだけど。
| skg | 2009/10/02 2:18 AM |
☆skgさん

ていうか日本盤出るのでしょうか?出るんだったら、もっとちゃんとしたの欠かせて頂くんですが(笑)。そういうのってどこに立候補すればいいのか(笑)。

A Public Affairの記事を昔ここで書いてるんですが、そこにもLester Mendezについて触れてるんですよね。たしか、skgさんにもコメントもらったような・・もう長い付き合いですね(笑)。

事前情報でCalle 13が参加、とか言われてたので、アグレッシヴに攻めるアーバン・オリエンテッドな曲も入るかと思ってたんですが、意外と純粋なポップアルバムでしたね。それにしても、最近はスペ語曲がさっぱりメインの方でヒットしなくなってしまいましたね。ヒスパニック系の人らはDL購入とかしないのかなあ。
| tippee | 2009/10/04 9:15 PM |




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